年末ジャンボだって良い買い方があるはず

2024年1月6日

年末ジャンボに向け、一攫千金を得るためにこれまで培ってきた統計学の知識を活用する時が来ました。

既存戦略を踏まえ、何かいい方がないか探っていきたいと思います。

前提

本件では2022年に開催された「年末ジャンボ宝くじ」(第945回 全国自治宝くじ)の設定のもとで話を進めます、具体的には以下の通りです。

くじ番号のパターンと当選番号について

01~200の連番からなる組、100000~199999の連番からなる番号、これらで構成される200×10万=2,000万枚を1ユニットとして販売されます。ユニットは売れてる数によってどんどん増やされるという仕組みです(多分)。

組、番号が当選番号の決まり方で決められた条件を満たせば当選です。

値段、当選金、本数について

表1:宝くじ設定

「当選確率」は1枚買ったとした場合の確率です(実際には1枚だけ買うことはできません)。

代表的なくじの買い方

  • 連番…下一桁が0~9の連番で他は全て同じの10枚
  • バラ…下一桁が0~9の全てを含み、その他の番号はランダム

他にもありますが、↑の合わせ技です。詳細は公式サイトをご参照ください。

その他ルールや補足

  • 重複当選あり(例えば7等の条件と6等の条件の両方に該当すれば3,300円の当選)
  • 抽選は完全にランダムに行われるとする(従ってどの店舗で買うかは当選確率とは無関係)
  • 23ユニットあるが、1ユニット分でも23ユニットまとめてでも確率計算は同じなので、以降23ユニット全てを使って計算

宝くじの夢

ギャンブルを評価する際、よく還元率(全部買った場合に戻ってくるお金の割合)、期待値が引き合いに出されます。ちょっと古いですが、総務省が作成した資料によると、平成20年時点での宝くじの還元率は45.7%で、競輪や競馬などの公営競技の還元率74.8%と比べると悲惨なものです。期待値にすると300*0.457 – 300 = -162.9円となり、平均的にいえば買うたびに半分損するというもはや募金です。

一方で、期待値だけで評価するのは時に不適切であり、収支のばらつきを考慮する必要があります。例えば、当たりかハズレかで貰える金額が決まるくじを1回だけやることを考えます。設定は以下の2通りです。

くじ1:参加費10円、10%の確率で100円が当たり、外れれば0円

くじ2:参加費1万円、1%の確率で100万円が当たり、外れれば0円

このくじと年末ジャンボ宝くじ(1枚購入)の収支(もらう金額 – 払う金額)の期待値、標準偏差をまとめると以下の通りです。

くじ1くじ2年末ジャンボ
期待値0円0円約-150円
標準偏差30円約99,498円約163,624円

標準偏差は最大-最小値幅のような値ではなく、データのばらつきを確率を考慮して定量化された値であり、ファイナンス分野ではボラティリティ(株価の変化率の標準偏差)とよばれたりする重要な量です。この例の場合、期待値で見ればくじ1,2は同じものですが、くじ2の方が圧倒的に標準偏差が大きく、これはその分大きな当選を狙えるということを意味します。まさに「夢の大きさ」と表現できます。

そして、宝くじは大幅なマイナス期待値ではあるものの、標準偏差が半端じゃない額になっています。確かに夢がありますね。それでは夢を掴むために、まずは既存の購入戦略を見ていきます。

既存の購入戦略の調査と評価

公式サイトを始め色んな解説ブログなどを漁った感じだと、当選するための工夫として以下のような方針があるようです。

  • 連番かバラを個人の嗜好で決める
  • 何度も購入する、たくさん購入する
  • 同じ店舗で買い続ける
  • 収支の標準偏差の増加率で購入枚数を判断する

それぞれ見ていって、使えそうか確認してみましょう。

連番かバラかを個人の嗜好で決める

大和総研が出した記事では、「理論的には「連番の方がよい」」と述べられている。ただし、これは「効用関数」という、ある結果に対する効用(例えば嬉しさ)を関数として定義したものを用いた結論で、効用関数次第で結果が変わってしまいます。一方で、連番とバラによる一定金額以上が当たる確率(お手数ですが元記事をご参照ください)は若干異なるため、ここは好みが別れるところかもしれません。

結論:自身の効用関数がわからない場合に使えない。また、そもそも連番かバラかで変わる確率は微々たるものであるので、ほとんど影響ない。

何度も購入する、たくさん購入する

当然すぎる主張ですが、一応詳細を見てみます。宝くじの購入歴、購入枚数、購入頻度に関して、1億円以上当選した方々合計390人へのアンケート調査結果が以下の表です。

公式サイトより:https://www.takarakuji-official.jp/data/004.html

この主張は、高額当選者は「74.9%が宝くじ購入歴が10年以上」「52.8%が1回当たり30枚以上購入」「49.7%が年数回以上購入」という結果を根拠として主張していると思います。

ただし、アンケート対象が1億円以上の当選者という極めて限定的である部分や解答の信憑性などから、傾向の根拠としては不満が残ります。例えば、100万円以上当選者にアンケートをとった場合、「購入歴が1年未満」がさらに増えるかもしれません。

結論:収支に関する言及がない、具体的に何枚買えばどれくらい当たったなどの情報がなく、活用しにくい。

同じ店舗で買い続ける

↑と同様のページからの引用で、購入した売り場を選んだ理由のアンケート結果です。

「いつも買っているから」が52.6%を占めていることから「浮気せず「いつもの売り場」を大事にするのが当せんの秘訣?」と述べていますが、高額当選者は購入回数が多く、そういった人はよく行く店舗くらいあるでしょう。あと、もはやどうでもいいですが回答項目に冗長性があり、アンケートとしてあまり良くない気がします。

結論:いつも買っている店かというよりは購入頻度・量が大事。

収支の標準偏差の増加率で購入枚数を判断する

pocco logさんで興味深い分析がされています。購入枚数を1枚ずつ増やした場合に、収支の標準偏差がどう変化するかを計算し、標準偏差が頭うちになったあたりで購入するのが良いと提案されています。しかし、これは「夢を買うなら」という前置きがあり、夢の大きさを標準偏差とするならば、頭打ちするところで買うのが合理的だという主張です。当選する確率には言及していないため、自分の好みを枚数に反映させずらいです。

結論:標準偏差の増加の頭うち感が人それぞれであること、当選確率と結びつけられていない点から個人の戦略に反映させずらい。

既存戦略全体を通した課題

「いっぱい買おう」的なことを言っているものに関しては「どれくらい?」に答えられてません。また、購入枚数や購入方法(バラか連番か)に答えを出しているものもありますが、尺度が直感的にわかりやすいものでなかったりでいまいち意思決定につなげにくいです。直感的にわかりやすい尺度で、具体的に何枚買えばどれくらい当たるのかに答えているものが欲しいと感じます。

何枚買えばいくらの賞がどれくらいの確率で当たるかを計算してみる

「何枚買えばいくらの賞がどのくらいの確率で少なくとも1枚当たりそうか」を計算することで、購入者が「これくらい買い増せばこのくらい確率が上がるんだな」と理解できるようにします。

まずは、冒頭の当選確率の表を、10枚づつ購入した場合のものに書き換えます。なお、簡単のため、購入方法は連番とします。

10枚連番で買った場合の当選確率

10枚買うので大体は(1 – a等が当たらない確率^10)で求められますが、当選番号の決まり方と連番購入の仕組みにより、6等と7等はそれぞれ10%, 100%になってます。また、1等の前後賞は「前後が繰り上がる/下がる場合」も考慮しないといけないので、他とは少し計算方法が異なります。

この表に基づき、「yセット(y×10枚)買うと、a円以上の賞がx%の確率少なくとも1枚はで当たる」を計算していきます。

この確率は、「yセット全部がa等未満である確率」の余事象なので、当選金額の確率変数Aを用いると

$$x = 1 – (1 – \text{P}(A \geq a))^y$$

で計算できます。「yセット買った際にa円以上の賞が当たる確率」は単純にa円以上の賞の当選確率を全て足すことで計算します。より適切にはa円未満の賞の組み合わせによりa円以上となる場合も考慮すべきですが、計算が面倒なので簡素化しています。

また、上の式より、購入セット数yは

$$y = \frac{\text{log}(1 – x)}{\text{log}(1 – \text{P}(A \geq a))}$$

で計算できます。

以上を踏まえ、購入セット数と当選確率を、賞の金額別に可視化したものが以下の図です。なお、300円当選は購入方法の関係で100%なので除いてます。

この図により、例えば「100万円以上の賞が50%の確率で当たるようするなら、3万セット(30万枚、900万円)購入すれば良い」ということになります。買い方の参考というより、ただただ宝くじは厳しいという結果を突きつける図になりました。

やはり宝くじは募金だった

還元率が圧倒的に低い上、これといった戦略もありませんでした。

ただ、募金もいいのではないでしょうか。ホームページを見ると、様々な公共施設へ充当されています。

公式サイトより:https://www.takarakuji-official.jp/kuji/jumbo/howto.html

以上を踏まえ、雑多に気になったことを最後に記しておきます。

  • 宝くじはあまりにも募金であるが故に、競馬やパチンコが恐ろしく割りの良いギャンブルだと錯覚してきます。特に、ざっと調べたところパチンコの還元率は80~85%ほどらしく、多くの人々が虜になるのも頷けます(?)。
  • 正直なところ私のようなリスク回避的な人間からすると宝くじにはなかなか手が出ません。もしかしたら、本来の目的(あたって嬉しいなど)以外に活用方法があったりするのでしょうか。
  • ↑に関して、マネーイズムの記事によると宝くじは少数であれば経費として認められる場合はあるものの、節税と言えるほどの効果を出すほどは困難で、当選金も特別利益として課税されるとのことで、少なくとも節税という観点からは全く期待できなそうです。