車を買わずタクシーで生活するという選択肢

2024/05/27データ分析の活用

利便性の高い場所に住んでいて、車を完全に移動手段として考えており、「なくても特に困ってないけどあったら便利」と感じている方々は多いと思います。「お金も貯まったし、なんかあった時に便利だし買っちゃおうか!」と勢いで買うケースもあるのではないでしょうか。

そんな時、想定される車移動のほとんどをタクシーで済ませるという新たな選択肢「タクシー生活」を検討してみましょう。

「そんな贅沢なタクシーの使い方はとてもできない」と思いがちですが、初手で数百万する車と比べたら意外と安くすむのでは?

ということで本記事では、車に対して「なくても特に困ってないけどあったら便利」と考えるような人が、車を買った場合とタクシーで全て賄う場合でどちらが費用面でお得なのかをシミュレーションしてみました。

結論

10年間の総費用で考えると、購入検討している車体価格$P_{\text{car}}$(万円)、年間走行距離$d$km、毎月の駐車場料金$C_{\text{park}}$(万円)が以下の関係を満たす場合は、タクシー生活のほうが安くなりそう。

$d \leq 1.84P_{\text{car}}+ 221.81C_{\text{park}} + 149.88$

維持費・タクシー代等の設定

各種情報の参照先は一番下の「参考」に載せています。

  • 車に関する仮定
    • 使用する車:N-BOX(2023年販売台数1位)(軽自動車)
      • 価格:179.0万(手数料込み)
      • 実燃費:15.79km/L
      • 自動車税:10,800円/年
      • 車検費用:43,860円/回
      • 任意保険:50,000円/年
    • ガソリン代:関東平均(4/15時点)として169.1円を使用
    • 5年目にタイヤ交換費用5万円がかかる
    • 走行距離5,000km ごとにエンジンオイルの交換費用5,000円がかかる
    • 最初の車検は購入から3年後、以降は2年ごとに受ける
    • 経年劣化による部品修繕・交換費用を反映するため、車検費用は初回から毎年5%ずつ上昇
      • 例えば、初回車検費用が4万の場合、4回目(3+2+2+2=9年目)の費用は$4 \times (1.05)^6 \fallingdotseq 6.5$万
    • 駐車場代は郊外は3,000円/月、都内の場合は10,000円/月
    • 出先の駐車場料金は微々たるものなので無視する
  • タクシー生活に関する仮定
    • タクシー代:
      • 東京都特別区の料金を使用
      • 送迎運賃: 500円
      • 初乗り運賃: 1.096km まで500円
      • ↑以降、100円/0.255km
      • 時間距離併用生運賃として、1分35秒ごとに100円加算
      • (適当な直感仮定)東京の場合は1分間/km、郊外の場合は0.5分間/kmの信号で止まるなどの低速イベントが起こるとし、これに伴い時間距離併用制運賃を以下のように計算する
        • 時間距離併用制運賃$:= \frac{\text{総移動距離(km)} \times \text{距離あたり低速時間(分/km)}}{95/60\text{分}} \times 100$
    • 基本的に毎回迎車だが、6回に一回は迎車不要で乗車できる(流し運転や付け待ちのタクシーを拾えたイメージ)
    • 旅行時はレンタカー(2万/3日間)を利用し、その際のガソリン代と燃費は前述の購入者と同じ

以上の設定のもとで、10年で買い替えることを想定し、10年間の総費用で比較します。

毎年の費用を利用シーンごとに比べてみる

現実的な状況について検討するために、ありそうなシーンを3つ想定してそれぞれ試算してみます。ちなみに、車を所有している方々は走行距離が少なすぎることにお気づきだと思いますが、そもそも「車がそれほど必要ない状況」にフォーカスしているため、このような短い走行距離の仮定を置いてます。

なお、住む場所による外出あたりの距離と駐車場料金に関しては、かなり適当ですがこちらの表の通り設定しました。

駐車場代買い物ちょっとした用事中距離お出かけ
郊外3,000円/月5km3km50km
都内10,000円/月2.5km2km30km
郊外、都内に関する駐車場代と移動距離表(往復)

検討する3つのシーンはこちら。

  • シーン1:利便性の高い郊外在住、スーパーやデパートに行くためそこそこ使う
  • シーン2:都内在住であまり使わないが、週1~2回くらいはどこかしら行く
  • シーン3:都内在住、あらゆるものに徒歩でアクセス可能でありお出かけも興味なし、たまに発生するちょっとした用事でしか使わない

シーン1:利便性の高い郊外在住、スーパーやデパートに行くためそこそこ使う

  • 年に一回旅行(往復500km)
  • 月あたりの走行距離:132km
    • 買い物:月4
    • ちょっとした用事:月4
    • 中距離お出かけ:月2
  • 月あたりのタクシー利用回数:20回(1外出あたり往復で2回)

車購入かタクシー生活かの設定ごとに毎年の費用を計算し、グラフにしたものがこちらです。

左図は1年ごとの出費であり、右図は出費を総和したものです。これがオリジナルデータですが、初期費用のせいで左図がみにくいので、今後は次の通り軸を絞ったものを見ていきます。

左図を見ると、車購入パターンに関して、車検とタイヤ交換が重なる5年目は他の年より高いことがわかります。この仮定だとタクシーは毎年定額となるので、全て同じ値となっています。タクシーは1kmあたり大体400円かかるので、距離が長い(この場合132km/月)と見ての通り高額になります。

右図から、3年目から早々に車の方が割安になっていることがわかります。

この設定では間違いなく車を購入しましょう。

シーン2:都内在住でほとんど使わないが、週1~2回くらいはどこかしら行く

  • 年に一回旅行(往復500km)
  • 月あたりの走行距離:43km
    • 買い物:月2
    • ちょっとした用事:月4
    • 中距離お出かけ:月1
  • 月あたりのタクシー利用回数:10回

車購入ケースに関しては、このレベルの走行距離で都内住みだとガソリン代はあまり影響なく、費用のほとんどが駐車場代などで占められています。

シーン1よりはタクシーのお得期間はだいぶ伸びましたが、それでも購入以降の出費差は凄まじく、7年目で総支出が同じくらいになってしまいます。

このケースでも車を買っちゃいましょう。

シーン3:都内在住、あらゆるものに徒歩でアクセス可能でありお出かけも興味なし、たまに発生する用事でしか使わない

  • 旅行無し
  • 月あたりの走行距離:36km
    • 買い物:月0
    • ちょっとした用事:月3
    • 中距離お出かけ:月1
  • 月あたりのタクシー利用回数:8回

月あたりの走行距離36kmと、もはやなぜ車買ったんだという状況ですが、ついにタクシー生活が現実を帯びてきました。10年目時点で、車購入の総費用が約390万、タクシー生活の総費用が約355万ということで、僅差でタクシー生活がお得ということになりました。

ただまあ、年あたり4万弱の差なので、大家さんと駐車場代交渉して車買っちゃいましょう。

では、どのような状況ならタクシー生活がお得なのか?

どちらがお得かどうかは、このシミュレーションにおいては10年間にかかる費用が全てです。また、先ほどの比較から、走行距離、車体価格、駐車場料金の影響が莫大であることがわかります。

ということで、この3つの値を変数として、どんな値の時にタクシー生活がお得になりそうかを確認していきます。

仮定は基本的に前述のものを用いますが、より平均的な設定にするために以下の項目を変更します。

  • 軽自動車は重量税が安いので、2,000cc以下の車の重量税の平均(約2.56万円/年)を使用
  • 車検費用についても同様の理由で6万とする
  • 駐車場代は3,000円、5,000円、1万円, 2万円の4パターンを用いて計算

この設定のもと、年間走行距離$d$、車両価格$P_{\text{car}}$、月あたり駐車場代$C_{\text{park}}$を用いて10年間の費用$C_{\text{mycar}}$は次のとおり計算できます(金額の単位は全て"万")。

$C_{\text{mycar}} = P_{\text{car}} + 0.0117 d + 120 C_{\text{park}} + 106.44$

続いてタクシー生活の費用を計算します。この比較の場合は何回乗るかが不明ですので、走行距離5kmごとに1回乗ることにします。運賃、時間距離併用制運賃については、10年間の累計走行距離に対してまとめて計算することにします。なお、旅行はレンタカーで行くとします。この仮定のもと、タクシー生活の年間費用$C_{\text{taxi}}$は次のとおりです。

$C_{\text{taxt}} = 0.5527\times d + 25.3547$

この二つの式を使って「車生活$\geq$タクシー生活」を整理すると以下のようになります。

$d \leq 1.84P_{\text{car}}+ 221.81C_{\text{park}} + 149.88\text{万円}$

このモデルを信じるのであれば、

  • 購入検討車の価格が1万円増えるたびに、タクシー生活における年間走行距離を1.84km増やせる
  • 月当たりの駐車場代が1万円高くなるたびに、タクシー生活における年間走行距離を221km増やせる

と解釈できます。よりわかりやすくするため、不等式の領域を水色で表したのが以下のグラフです。

水色の領域であればタクシー生活がお得ということになります。例えば、毎月の駐車場代が1万円(左下図)の場合、「年間走行距離が約750km以下になりそうなら、購入検討車の価格が200万円以上の場合はタクシー生活のほうがお得」と解釈できます。

特に、駐車場代が月2万の場合はタクシー生活がお得になるケースはそれなりにあるように思えます。「たまに車を使いたいが駐車場代が数万する」というケースでは、タクシー生活を検討してもいいのではないでしょうか。

まとめ

年間走行距離、月間駐車場料金、車体価格の関係からタクシー生活がどんな場合にお得になるかを定量的に見てみました。結果として、特に駐車場料金が高い都内の場合はタクシー生活のほうがお得になるケースが少なからずあるということがわかりました。

ちなみに私は車を買う予定です、ドライブ好きだしあらゆる面で便利なので。

参考

  • 車両価格参考:各社ホームページ

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